【緊急レポート】喘息薬「テオフィリン」は安全?危険?

気管支喘息の治療薬「テオフィリン」の副作用である「痙攣」(けいれん)が、マスコミで取りあげられ問題になっています(11月20日asahi.com)。そこで11月19日・20日、福井で開催された第42回日本小児アレルギー学会で「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005」が発刊され、使用に関するガイドラインが発表されました。そのガイドラインを踏まえ、この問題を取り上げたいと思います。

なお、「テオフィリン」といっても実際に手にするのは商品名です。その商品名は、内服薬では「テオドール」「テオロング」「スロービッド」「ユニフィル」など。注射薬では「ネオフィリン」「テオドリップ」などが挙げられます。

  • テオフィリンが喘息に使用される理由


錠剤や粉薬で処方されます。朝と夕または寝る前の2回飲むことが多い
テオフィリンがなぜ喘息で使用されるかというと、気管支を拡張し炎症を抑える作用があるためです。

上記の作用がありますが、テオフィリンの血中濃度(血液中の薬剤の量)によっては、その作用が異なります。

  • 気管支拡張作用  10μg/ml以上
  • 抗炎症作用    10μg/ml以下

一般に、5-15μg/mlが望ましい値(有効血中濃度)です。

  • テオフィリンの副作用


発熱時は注意が必要です
テオフィリンは肝臓で代謝され、その代謝の程度は年齢や個人の差によって異なります。つまり、人によっては血中濃度が上昇して(血液中の薬剤の量が正常値より多くなる)、副作用が出やすいということです。

多い副作用としては、悪心・嘔吐などの胃腸症状や、興奮・食欲不振・下痢・不眠などが挙げられます。また血中濃度が高いと、頻脈や不整脈などの心臓への影響、そして、現在問題になっている「痙攣」を引き起こします。これを「テオフィリン関連痙攣」と呼びます。痙攣を起こすと、重篤な後遺症を残したり、場合によっては死に至ります。このテオフィリン関連痙攣は、乳幼児(5歳以下)に多く報告されています。それは、
熱性痙攣を含めて、乳幼児は痙攣を起こしやすい
乳幼児は、テオフィリンの代謝の程度に個人差があり、血中濃度が高くなる可能性が高い
発熱などがあると、テオフィリンの代謝が悪くなるので、この時期は発熱しやすい
抗生剤などの薬物によっては、テオフィリンの代謝が悪くなることがある
など、様々な要因が関わっています。その関連については、慎重に検討する必要があります。現在、学会・厚生労働省の研究班が調査をしています。


テオフィリンを使用するケースは?
2005年の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」でテオフィリンは、乳幼児(5歳以下)では他の薬で効かない場合に使用することになりました。

つまり、テオフィリンは喘息に効果はありますが、乳児(2歳未満)では小児アレルギー専門医の下で使用することが望ましく、幼児(2〜5歳)でも抗アレルギー薬や吸入ステロイド薬の追加の薬として使用されることになります。

テオフィリンに替わっていく薬剤として、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン・キプレス・シングレア)や吸入ステロイド薬(フルタイド・キュバール)といった薬が世に出ています。使用するかどうかは、医師と相談して決めていくようにしましょう。

以上、わからない点や不明の点は、かかりつけの医師に必ず相談するようにしてください。

豆知識
血中濃度:血液中の薬物の濃度。薬物が効果を示すには、ある程度の濃度が必要で、濃度が高くなると、副作用が多くなり、濃度が低いと効果がない。副作用もなく、効果が期待できる濃度を有効血中濃度と言っている。

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